計算方法:シミュレーターは核爆発の影響をどう計算するか

シミュレーターが地図上に描くものはすべて、公開され機密解除された核兵器効果のモデルから計算しています。このページでは、数値がどこから来ているのか、どのような前提に立っているのかを説明します。

核実験の爆発
1953年、ネバダ核実験場で行われた23キロトンの「バジャー」実験。ここで使う効果モデルは、こうした何百回もの実験データに基づいています。

主な資料

中心となる文献は、サミュエル・グラスストンとフィリップ・J・ドーランによるThe Effects of Nuclear Weapons(第3版、1977年)です。かつて米国政府の公式資料だった核兵器効果データの標準的な集成で、すでに機密解除され、誰でも入手できます。補助的な関係式は、E・ロイス・フレッチャーのスケーリング研究、米国技術評価局(OTA)のThe Effects of Nuclear War(1979年)、そしてアレックス・ウェラースタインのNUKEMAPプロジェクトで広く知られるようになった公開済みの式から取っています。

過圧による被害範囲の図
過圧の基準値。20 psi(完全破壊)、5 psi(住宅が倒壊)、1 psi(窓ガラスが割れる)。

爆風の過圧

爆風による被害は、過圧のpsi(ポンド毎平方インチ)で表します。距離は威力の立方根に比例します(ホプキンソン・クランツ則)。つまり威力が8倍になっても、それぞれの圧力の輪は2倍しか広がりません。シミュレーターの標準の輪は、広く認められた被害の基準に対応しています。20 psiでは鉄筋コンクリートの建物が破壊され、死亡率はほぼ100%に達します。5 psiではほとんどの住宅が倒壊します。1 psiでは窓ガラスが割れ、けが人が出ます。空中爆発の場合、モデルは選んだ過圧の半径が最大になるように爆発高度を最適化できます。

熱放射

熱放射の輪は、熱パルスが一定の確率でI度、II度、III度の熱傷を引き起こす、あるいは乾いた木材を発火させるだけのエネルギー(cal/cm²)を届ける斜距離を示します。大きな爆発ほど熱パルスを放つ時間が長いため、必要なエネルギーは威力とともにゆるやかに増えます。モデルは大気の視程が比較的良好な状態を前提としています。もや、雲、物陰があると、実際の結果は大きく変わります。

電離放射線

放射線の輪は、爆発直後の中性子とガンマ線によって一定の初期線量(rem)が届く距離を示します。500~600 remの線量は、集中治療を受けなければ通常は致命的です。大威力の兵器では、致命的な爆風と熱線の半径が初期放射線の半径をはるかに超えて広がるため、この効果がもっとも重要になるのは広島級の小型兵器の場合です。

放射性降下物

放射性降下物の広がりは地表爆発についてモデル化しています(火球が地面に触れない空中爆発では、局地的な降下物はほとんど生じません)。入力は威力、核分裂の割合、風速と風向で、出力は爆発1時間後(「H+1」)を基準とした毎時ラド単位の線量率の等高線です。公開文献に記されたSIMFIC方式を簡略化した手法に従っています。実際の降下物の分布はこれよりはるかに入り組んでいて、あらゆる高度の風、雨、地形に左右されます。

地形と建物

地図上の輪はすべて、平坦で開けた地面を前提に計算しています。古典的な参照モデルも同じ前提で作られています。実際の地形では様相が変わります。熱線は直進するので、尾根や頑丈な建物の陰にあるものは熱傷から守られ、逆に火球に面した斜面はより強く熱線を浴びます。爆風は障害物を回り込みますが、丘の裏側では弱まり、谷や長い直線の通りは爆風の通り道になります。長崎はその教科書的な例です。原爆は浦上の谷の上空で爆発し、周囲の丘が破壊の大部分を閉じ込めたため、丘の向こうの市街中心部の被害は、輪だけから予想されるよりずっと小さくなりました。高層ビルが密集した地区は、それ自体が遮蔽となり、がれきも生みます。輪は理想化された平らな都市についての規模の目安と考え、通りごとの被害地図として読まないでください。

火球からの視線を丘が遮る断面図。地形の影を斜線で示す
火球と地面のあいだにある尾根は地形の影を落とします。視線が通らなければ熱線による熱傷はありません。大きな尾根の奥では、爆風もおそらく弱まります。

この一部を示すため、地図は爆発のたびに地形の影を描きます。シミュレーターは公開されている標高データを使い、火球から、実際の爆発高度で地球の曲率も考慮に入れて720本の光線を飛ばし、熱傷半径の内側で火球が見えない場所をすべて青い斜線で塗ります。視線が通らなければ、熱線による熱傷はありません。建物は含めていません。建物の高さを網羅した世界規模のデータが存在しないためです。大きな尾根の奥深くに隠れた場所(視線が地形より150 m以上下を通る場所)は、爆風半径の内側で赤い斜線で示します。これは爆風がそこではおそらく弱いという定性的なヒントにすぎず、爆風の輪自体は円のままです。衝撃波が実際の地形をどう回り込むかを計算するには、本格的な物理シミュレーションが必要になるからです。キーウや広島の大部分のような平地では、影はほとんど消えます。本来そうあるべきです。

死傷者の推定

爆発のたびに、シミュレーターは死者と負傷者の数を推定します。GHS-POP 2025人口グリッド(30秒角、約1 km。欧州委員会共同研究センター、Global Human Settlement Layer、CC BY 4.0)を使って被害の輪の内側にある1平方キロメートルごとの住民を数え、米国技術評価局の研究The Effects of Nuclear War(1979年)による爆風過圧ごとの死傷率を適用します。12 psi超では約98%が死亡、5~12 psiでは50%が死亡し40%が負傷、2~5 psiでは5%が死亡し45%が負傷、1~2 psiでは約25%が負傷します。初期放射線が強い爆風の区域より外まで届く小型兵器では、500 remの輪の内側にいる人の少なくとも半数を死者として数えます。

爆風過圧の区域ごとの死者、負傷者、無傷の人の割合を示す棒グラフ
シミュレーターが各過圧区域の住民に適用する死傷率。

これらの数字は大まかな桁の目安であって、予測ではありません。人口グリッドは人が住んでいる場所を示すので、昼間にビジネス街が攻撃されれば被害はずっと大きくなります。シェルター、火災旋風、放射性降下物、医療体制の崩壊はモデルに含まれていません。

地形の影を有効にすると、推定値は1平方キロメートルごとに調整されます。火球が見えない人は熱線による熱傷を免れるため、その死傷率から熱傷に由来する分を差し引きます。広島と長崎の推定に沿って、死者のおよそ4分の1、負傷者のおよそ3分の1です。大きな尾根の奥深くにいる人は、一つ外側の爆風区域として数えます。凡例には両方の数字が表示されます。実際には、高高度の空中爆発では効果は小さく、起伏の多い都市での低高度爆発では大きくなります。多くの人が住む谷は、やはり火球に面しているからです。

既知の限界

  • モデルはおよそ1キロトンから20メガトンの威力で較正されています。この範囲の外の値は外挿で、信頼性が下がります。上限は100メガトンです。
  • 死傷者と被害の数値は一様な条件を前提としています。地形による遮蔽なし、天候なし、平均的な建物です。
  • 結果は教育のための推定値で、民間防衛の計画用ではありません。それぞれの仕組みが何をするかは核爆発の影響をご覧ください。任意の都市と威力の数値を見るには、シミュレーターをお試しください。